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2023/05/29

実検するおじさん

ROLAND ジャズコーラス JC-22に「音が硬い」と言う前にやるべきこと

ROLAND ジャズコーラスシリーズの末弟JC-22を購入しました。
Youtubeなどの紹介も少なく、紹介があっても全般的に「音が硬くて使いにくい」的な紹介が気になりました。そんなことないですよ、使い方を知れば甘いサウンドが出る良質なアンプですよ、ということを紹介したくて記事を書きました。

確かに「繋げばよい音が鳴るアンプとは違う、特徴を知ったうえで積極的に音作りをしなければ良い音が鳴らない」という特徴がありますし、箱出し状態では音が硬いです。でも、そこをクリアするコツがあるのも確かです。

そこで、私がJC-22を購入後に行った慣らしと、良いサウンドを出すためのセッティングのコツを紹介します。




○箱出し状態では音が硬いJC-22


 新品を箱から出して、TREBLE、MID、BASSを12時位置にして、音量を適当にして鳴らすと「パキーン」とJC(ジャズコ)サウンドっぽい硬いサウンドが鳴ります。そういう特性のアンプであることは否定できませんが、音が硬くて使いにくいと言う前にやるべきことがある、というのが今回の記事の内容です。

 慣らしの観点と、セッティングの観点で説明してゆきます。


○最初に「JC-22の慣らし」をしよう


 ヘッドホンを始めとしたオーディオ関連に馴染みがある人は、届いたヘッドホンやヘッドホンアンプの慣らしをしないと本来の性能が出ないというのは常識的です。「エージングなんて無い」という派閥もありますが、私の経験上、かなり変わります。これは「長い時間をかけてギターが鳴るようになる」というものよりも単純で「最初だけは音がキツイ」といったレベルのものです。

 ヘッドホンアンプのaune X1s GTや、その他のヘッドホンにて強く感じたことを書きますと…

・金属が共振しているような変な鳴りが載る
・低音が出ない
・中音域の暖かさや厚みが出ない


 これって、JC-22の音が硬いというのと近いですよね? この原因は以下が考えられます。

1.電気回路(特に電解コンデンサ)が本来の性能が出ていない
2.スピーカーが馴染んでいない
3.筐体が馴染んで鳴っていない


 1は反対派が多いところですが、電解コンデンサははんだ付け後に軽く損傷を受けているのですが、通電によって本来の性能が出るようになってくるのは電気屋的には常識です。コンデンサによってはスペックシートにエージング特性が記載されているものもあります。

 2はヘッドホンと共通ですね。スピーカーユニットは磁力を使って動く力を生み出して振動板を揺らしています。ここで、振動を生み出す部分(ドライバー)の馴染みなのか、振動板の馴染みなのか、最初は動きづらいようで、ヘッドホンの場合においても、最初は音が硬い傾向があります。

 3はギターが鳴るようになることに近いです。差はあるのですが自宅レベルの音量では差が出にくいと思うので、ここでは省略します。使い込んだJC-120が甘くて広がりのある音が出るのはこれのおかげだと思っています。

aune audioのDAC+ヘッドホンアンプのX1s GTを購入しました。厚みがあるサウンドで、駆動力が高いです。HIFIMAN ANANDAとの相性が良く、非常に満足しています。


○JC-22の音の硬さを緩和するためには?


 馴染んでいない、ということは馴染ませればよいのです。電気回路、電解コンデンサの場合は通電してやればよい。部品が設置されている場所により、電源ON状態にするだけで良い場合もあれば、信号ラインについている場合は音を出してやる必要があるものもあります。

 根気強く使ってやることも良いですが、手っ取り早いのは音を出し続ける工夫をすることです。私の場合は、ルーパーにドラム+ベース+ギターの適当な音を吹き込んで無限ループさせました。


 あるいは、オーディオプレイヤーとJC-22を接続できる3.5mmステレオ→6.0mmモノラルケーブルを使って音楽を鳴らしてやります。


 ヘッドホンやヘッドホンアンプの経験から、24時間で随分変わります。100時間もすればかなり馴染むでしょう。


○JC-22のイコライザーの特徴を知る。良い音が鳴るセッティングとは?


 ジャズコーラスシリーズおよびJC-22のイコライザーは、他のギターアンプと比べてちょっと特殊です。と言いますか、そもそもJCシリーズってギターアンプとしては尋常ではないほど「フルレンジ」で「オーディオアンプ的」なのです。これは↑に書いたような方法で音楽を鳴らしてみると分かります。ふつーにベースが鳴らせます。


 TREBLE、MID、BASSをすべてゼロにして鳴らしてみます。すると、音量がすごく小さくモコモコモヤモヤして、まともな音が出ません。つまり、イコライザーの効きが強いのです。対照的なのがマーシャルで、マーシャルは(特にBASSは)ゼロでもまともな音がします。JC-22での音作りは、良く効くイコライザーを意識しながら進めましょう。

 次に、どれかひとつをMAXにして音の変化や、持ち上がる領域をチェックしてみましょう。

 最初にMIDをMAXにします。ギターの美味しいところがほとんど持ち上がってくる感じで、ギターのクリーンサウンドなら、これでもOKなぐらいの雰囲気の良い音が出ます。では、歪ませてみたらどうか? この状態でアンプ前段にディストーションなどを入れて弾いてみると、歪みのキラッとした成分が少ないサウンドとなって物足りません。

 ではTREBLEを上げるとどうなるか? TREBLEを12時位置にするだけでJCっぽい硬いサウンドになってしまいます。試したところ、TREBLEは一般的なギターアンプよりも高音に効いていて、しかも効きが強いようです。私の感想としては、一般的なTREBLEとマーシャルなどのPRESENCEの両方に効くようなイメージでした。そのため、MIDでサウンドを作ってから、歪みの煌びやかさをTREBLEで追加するように意識して調整しましょう。

 BASSも特徴的で、かなり低い低音に影響を与えて、しかもギターアンプでは使わないほど低音域が出るようになります。試しにベースをつないで弾いてみたところ、他のギターアンプでは出ないような「太くてズシンとくる低音」が出ます。試してみたところ、ロックの範囲であれば12時位置でも十分すぎる(過剰なほどの)低音です。


 以上を検討して、自宅で楽しむレベルでのセッティングを考えます。自宅レベル=小音量ですと、TREBLE 9時、MID 12時、BASS 9時を基本にしてやると、ギターアンプらしい中音域にフォーカスしたサウンドになります。ここから歪みの鳴り方の様子を見ながらTREBLEやMIDを弄ってゆきます。TREBLEとBASSを上げ気味(といっても12時ぐらい)にしてハイゲインなエフェクターをONにしてやると、刻みが気持ちの良いハイゲインアンプ風になります。ちょっとしたスタジオや小規模なライブに使用する場合は、スピーカーやキャビネットの鳴り方が少し変わってきますので、音を聞きながら調整しましょう。個人的な経験から推察すると、低音を上げ気味にすればマッチするはずです。今度試してみます。

※MIDを12時と書きましたが、MIDは9時からMAXまでお好きに調整してOKだと感じています。


○ジャズコーラス特有の裏技を使う


 ジャズコーラスシリーズの特徴で、JC-22にも備わった特徴として、2chのスピーカーとアンプが備わっており、モノラル入力で2ch共に鳴ることが挙げられます。2ch鳴るということは、それだけボリュームを小さくしても2ch分の音が出てしまい音がデカくなりやすい(ボリュームの調整がシビア)ということに繋がります。

 また、小音量でスピーカーを駆動すると低音が出にくい(低音を鳴らすには大きなパワーが必要)ですので、高音寄りの特徴になりやすいです。「アンプは小音量だと音が細くなりがち」というやつです。

 そこで、2chの入力のうち、片方に音を入力しないプラグを挿してやります。宙ぶらりんで浮いている状態だとノイズの元になりますから電源OFFのエフェクターの出力をつないでおくと良いです。すると、2ch時と同じ音量で鳴らすためにはボリュームを上げ気味にする必要がありますので、音の特徴が少し変わって中音域~低音域が鳴りやすくなります。試してみる価値はあります。ボリュームの調整もやりやすくなりますよ。



○「慣らし本当にそんなに差があるのか?」という疑問への回答


 だいぶ前に、中古のJC-22を試奏した際に、結構甘いサウンドが出て印象が良かったのです。楽器店の店員さんも「新品は硬いけど、この個体は良い感じに鳴ってますね。中古はこういう傾向があります。」と言っていました。実際に、自分が新品を購入後に「中古の個体とかなり音が違う」と感じて、この感想は間違いではなかったと考えています。


○最後に、JC-22を使ってみて感想



 Youtubeなどのインプレッションで述べられているような「音が硬すぎて、手ごわすぎる」「特殊なことをしないと良い音が出しにくい」というのは違うと思います。慣らしをしてセッティングを出せば、クリーンでも綺麗で甘いサウンドが出ますよ。

 ただし、ジャズコーラスおよびJC-22は音作りが難しいアンプであることは間違いないです。書いたようにイコライザーの効きが特徴的ですし、単体では歪みません。TS9のような「歪んだアンプに絡ませることが前提」であるエフェクターとの相性も悪いです。歪んだサウンドが欲しければ、アンプのような積極的なサウンドメイクができるエフェクターを前段に置く必要が出てくるのも確かです。

 自分の環境の見直しや、サウンドメイクの練習ができており、カチッとしたキャビネットから出る芯のある安心感のあるサウンドは好みです。昨今はモデリングアンプの性能が上がって「繋げば、ギターヒーロー達の素晴らしいサウンドが出る」タイプのアンプではありませんが、取り組みがいがあり、長く使える良品です。見た目の高級感やプロ機材っぽい雰囲気があって、非常に良いですよ。ROLANDの本気ですわ。これは。

 ストイックすぎる面があるので「初心者が最初に買うアンプ」にするのはお勧めしません。エフェクターもいろいろと必要ですから。でも、機材が揃った手練れには良い練習相手になってくれます。