テープがこびりついていたり、汚れが気になる見た目の問題の他、フレットの減りすぎで音詰まりが出るなど、中等症といったレベルでしたがなんとかレストアすることができました。
○Burnyのレスポールカスタムっぽいモデル
ブラックにホワイトのバインディングのボディー、マークのあるヘッドからレスポールカスタムの香りがします。BUCK-TICKの星野英彦シグネイチャーモデルとのことですが、F・R共にハムバッカー搭載です。(ネットで調べるとミニハム?っぽいものが載っているものばかり) マスターボリューム&マスタートーン+セレクターという構成です。原因は不明ですがリアハムの出力が異常に小さい状態です。素性不明かつマッチングも良くないように思うので、これは交換します。テープがこびりつくなど見た目の状態は悪いですね。
5フレあたりの減りが酷く、音詰まりが生じていました。
ネック裏の塗装が縮んでいますね。触り心地がペタペタしてすべりが悪く演奏感が良くないですね。
全体の状態は悪いように見えますが、きれいに磨いて修正してやれば状態が良くなる直感があり、レストアに取り掛かることにしました。
○レストア内容
・トラスロッドの調整
・フレットのすり合わせ
・ピックアップ交換
・電装系リフレッシュ
・Fボリューム、Rボリューム化
・ネック裏のサテン仕上げ加工
・ボディーの磨き直し
とまぁ、こんな感じです。
トラスロッドは効くものの、5フレットあたりの凹みが大きいです。フレットの減りだけでなくてネックの波打ちがあって5フレットあたりが凹んでいるようでした。本来はネックを修正するのが本筋ですが、トラスロッドの効きが均一ではないようでした。
セオリー通りにするならば「ネック修正→フレットで平面を出す」という流れですが、ネック修正が私には難しいのでネックが凹んだまま進めます。そのため、ネックが盛り上がった部分でフレットを削りすぎる恐れがあったため、音詰まりが無くなる程度に最低限に済ませることにしました。やりすぎの回避です。
フレットのすり合わせを行った後です。すり合わせは以下のサイトを参考に角材に紙ヤスリの600番と800番を巻き付けて加工しました。
参考サイト:ギターのレシピ、よろずDIY日記、OZIMAS Guitar Atelier
まだ弦の当たりによる凹みが残っているので「もう一削り」すべきですが止めておきます。やりすぎないことが初心者がミスしないコツです。マジで。
この状態ですとフレットの上面がフラットになっていて、この状態で弾くとフレット上の2点で当たったりして「ギィーン」とい独特のビビリ音が生じたりします。この状態では問題なのでフレットの形状を整えます。根性で紙ヤスリや棒ヤスリで整形しても良いのでしょうが、それは難易度が高すぎる…。そこで以下のような工具を用いるのが良いです。
フレットが山型になっているのが分かります。もう少し肌荒れを抑えて磨くと良いですが、音詰まり解消などの検証ができてから何度かに分けてじっくり仕上げようと思います。
フレットのすり合わせ~仕上げる際のポイントとしては、耐水ペーパーを使用して水かレモンオイルを塗って削ることです。フレット用のヤスリでも同様です。こうすることで金属粉が飛び散らなくなり片付けがしやすくなります。また、ヤスリの目詰まり防止となったり、仕上がりもきれいになりやすいです。これは水研ぎとか油研ぎと呼ばれる手法です。
仕上げにハッピヒのSIMICHROME POLISHで磨きます。
ピカールでも良いのですが、手元にあったためにこれを使用しました。ペースト状で量を調整しやすく、研削力も弱めで使いやすいです。気に入っています。磨く際は布に着いているか分からないぐらいの微量でOKです。磨く面積が狭いし、はみ出たものが指板につくと面倒です。
○Seymour Duncan SH-4とSH-5の組み合わせ
ピックアップは、このギターのオーナーが死蔵していたセイモアダンカンSH-5をフロントに、リアにSH-4(いわゆるJB)を使用することにしました。取り付けは簡単でした。POTの作動が怪しくなっていたことと、ジャックの接続が不安定であったためすべて取り外してリフレッシュします。
このギターでトーンを弄ることがないように思ったことと、フロントとリアのボリュームバランスが取れるか不明なこと、リアはフルでソロを弾いて、フロントを絞ってバッキングとかおしゃれなことをしたかったことから、フロントリアの独立ボリューム化することにしました。
さて、トーン機能を削除する際にトーン用コンデンサも削除してしまうと音がキンキンする恐れがあります。これは、トーン10状態でもトーンのカットオフ周波数がそれなりにサウンドに影響を与える値になっているためです。そこで、ダミーのトーン回路を追加してやることを推奨します。
配線も初めてにしては、まぁ良くできた方ではないでしょうか? はんだはALMITを使用しました。音も良い(比較実験の経験あり)ですし、はんだ付けがしやすいです。はんだごては70Wぐらいはあったほうが作業しやすいです。POTはサウンドハウスで激安のアルファを使用しました。レビューには「筐体部にはんだが載りずらい」と書かれていますが、フラックスか何かがコーティングされているためなので、あらかじめパーツクリーナーかアセトン、アルコールで拭いてやると取れて、はんだの乗りが良くなります。これ必須。
なお、SH-5は通常はリアに配置するものですが、コスト削減で所有するものを取り付けた形になります。このギターの1-6弦幅は52mmで、通常のレスポールより幅広な模様。
○ネック裏とボディーの仕上げ
ネック裏は、800番の耐水紙ヤスリにレモンオイルを塗って軽く、本当に軽く撫でてやることで艶消し状態にしました。写真ではきれいに均一に仕上がっていますが、実際はもう少しムラがあります。完璧に仕上げるなら、マスキングしてマット仕上げとポリッシュ仕上げを切り替えたり、削った後にポリッシュしたい部分を磨いてコントラストをつけたり、もう少し均一になるまで削るのが良いです。演奏のタッチが良くなったのでこれで十分です。 ボディーのテープの除去はマニキュアの除光液=アセトンを使用しました。アセトンはマジで強力です。スルスルと取れてゆきました。ただし、これはウレタン塗装だったから良かっただけで、塗装を激しく損傷する恐れがあります。見えないところで試してからにしましょう。最後に何かしらのコンパウンドで磨いてからクリーナーできれいにします。タミヤのコンパウンドを持っていたのでこれで行いました。ペグの増し締めもしておきましょう。結構緩んでいましたので、定期点検をすることをお勧めします。サウンドに結構影響します。
○レストア完成とSH-4&SH-5の印象
パネルはアセトンで溶ける恐れがあったのできれいにするのは辞めておきました。
サウンドのレビューとしては、予想通りSH-5をフロントに載せたことでパワーが強く、低音がボワボワしがちでした。そのため、全体を低めに、さらに低音側を低くして遠くしてバランスを取りました。回路も正常に作動しています。
配線の問題というか弱点としては、どちらかのボリュームをゼロにした状態でミックスにすると音が消えてしまいます。配線はレスポールに準じており、レスポールでも同様の症状となります。いや、なんか良い対策は無かったんですかね?(笑) 回路で示すとこんな感じ。
かなり重い個体で4.5kgぐらいあります。鳴りもそれなりといったところですね。リアではJH-4の中音域に集まったリッチな太さのあるサウンドです。高音も出ていて歪ませたサウンドにマッチします。遠めに設定したフロントも甘くて豊かなサウンドでバランスが取れています。自画自賛ですが、なかなかの仕上がりとなりました。このギターでBOSS OD-3なんかに繋げると、90年代ジャパニーズロックなサウンドになります。
ピカピカになり、演奏しやすくなったし、サウンドも満足できるものでした。今後の展開としてはフロントにだけハイパスコンデンサを入れても良さそうですね。
思ったよりも良い仕上がりとなって、良い経験となりました。いや、もうやりたくないな。フレットのすり合わせとか怖すぎるぜ。