コンセプトが非常にはっきりしたDAPだと思います。可能な限り小型・薄型で、HIFIMANの許容できる音質を実現するというのを徹底したのだな、ということが、手に取って使ってみると良く分かります。
※スポンサー
〇HIFIMAN SuperMini外観
見ての通り小型・薄型です。操作系も非常にシンプルですね。小型タイプの物は、どちらかというと小さく、やや厚いShanlingのようなタイプが多いですが、こちらはAK Jrなどのように薄く、細長いタイプです。
価格はイヤホン無モデルが約3万円であり、薄型のサイズ感を考えると、iPod touchやウォークマン(現行ならA40シリーズあたり)が競合すると考えられます。(FiioやxDuooにも色々あるのは分かっていますが、厚いタイプはコンセプトが違う気もしますし、同じサイズ感の物でも価格はSuperMiniが上なので、競合というには無理がありそうです。)
iPod touchやウォークマンを作っている各メーカより規模の小さいHIFIMANが、DAPを製造するとなるとコスト高になってしまうのは当然のこととして、機能がライバルより少なく、価格差があってもSuperMiniが良い!という説得力があるとHIFIMANは考えているのでしょう。このあたりを垣間見れたらな、と思います。
〇操作感
動作は軽快です。
物理ボタンで構成されたインターフェイス。個人的に物理ボタンが好きなので好感が持てます。デザインは非常にすっきりとしていてわたし好みです。クリック感はしっかりとしており、少し固めとも言えます。xDuoo X10は操作が柔らかく、ポケットに入れていると再生・停止が押されたり、曲送りが押されてしまったりするんですよね…。SuperMiniではそういう感じはありませんでした。
電源立ち上げから音出しまでが非常に速いです。また、MicroSDカードを入れて内部ライブラリを更新するまでの時間も非常に短く、ストレスはありません。
操作するのは前面の3つのボタンと、音量の大小ボタンです。説明書を全く読まなくても操作できたので(←)、とても簡単です。
〇音の短評
誠に申し訳ないですがDAPの比較対象が少なすぎるので参考情報程度に読んでもらえると助かります。
★xDuoo X10と比較して
X10は中高音が明瞭なすっきりとした音を出すDAPだと私は感じています。aune M1sも(レンタル試聴における感想では)同様の傾向で、それを更に高めた感じであり、全体的な解像度や中高音の分離の良さに特徴があるように感じました。
これに対しSuperMiniは、中低音域が濃厚というか密度が濃い印象です。楽曲のバランスを崩さずに、明確なキャラが立ったDAPになります。その分、DAPで色付けをして欲しくない人には選びにくいですが、これが好きなら優先して選びたくなるような魅力がありますね。
中低音の厚みや暖かみの少ないTFZ EXCLUSIVE 5とあわせてみましたところ、どうしちゃったの?というぐらい厚みのある音になり驚きました。元々派手な方向の音ですが、さらに充実感のある感じで、さながらエクストラショットを追加したような雰囲気です。
気になった点としてはホワイトノイズが大きめです。私の感じ方としては、音楽鑑賞を妨げる程ではありませんが、再生停止状態でイヤホンを抜き差しすると、明らかに感じる程のホワイトノイズが出ます。このあたりは、使用するイヤホンの能率などにも影響しますし、個人の許容できる量というのも違うと思うので、試聴の際は注意してチェックいただきたいところ。
※スポンサー
★RE800Jとの組み合わせ
今回、HIFIMAN JAPANさまより、RE800JとSuperMiniのセットでレンタルいただきました。つまり、この組み合わせでRE800Jを楽しめるだけの性能があると公式が考えていると判断しました。(RE800Jのレビューはこちら)
RE800Jは、RE800(正確にはその最終サンプルを試しただけですが)よりも音に厚みが出た印象ですが、どちらかというと、中高音域の鮮やかさの方が印象的なイヤホンです。これに対し、SuperMiniは明らかに中低音域の濃厚さが特徴のDAPとなります。
これらを組み合わせますと、SuperMiniのほうが影響が大きいようで、中低音域の厚みや暖かみがある音を出し、他の環境で試した時のRE800Jの印象とは異なるイヤホンのように感じます。
SuperMiniで使用した場合、中低音の音量が増した分、相対的に高音域が落ち気味になるのですが、RE800Jで感じたドラム(特にシンバル)の定位の良さがスポイルされることなく、空間的な広がりの良さは保っています。
また、全体的な音の厚みがあるチューニングとはいえ、ボーカルは明瞭で生っぽさも良く出ています。高音域が少し落ちた分だけ、ボーカルが持ち上がるようなチューニングになっていて、ボーカルに集中して聴き込みたい人にとっては、よい結果が得られるように思います。
音量を上げていったときに、X10では高音域の粗っぽさが気になり始めます。これに対し、SuperMiniは、マイルドになっているために目立ちにくいのか、そもそも歪みが少ないのかは分かりかねますが、X10に対して優位性があります。
ベースおよびバスドラのアタックが前面に出てくる感じは控えめで、なだらかに中低音から低音に向かって落ちていくような印象。ただ、結構低い所まで出ているように思います。誤解を恐れずに書くと、中低音が多めなのでベースラインは強めに出て、キックは弱めに出るという印象を持ちます。
色々と書きましたが、楽曲のバランスを崩すほどの変化ではないです。ここまでで説明したように、全体的にマイルドになる方向性になりますので、聴きやすい、耳障りの優しいバランスとなります。
〇雑感
最初にも書きましたが、非常にコンセプトがはっきりした商品です。HIFIMAN製品(特にイヤホン)を十分に駆動し、HIFIMANチューニングの音を可能な限り持ち運びやすく気軽に使用できるDAPで実現する、ということだと思います。(逆に、そうでなかったらHIFIMANは何をしたかったんだ???と思いますが…)
今回、RE800Jとの組み合わせで貸していただいたのですが、使い勝手としては非常にマッチングが良いように思います。比較的鳴らしやすく非常に小型かつ高音質を実現するRE800Jと、ハイレベルなイヤホンに必要な駆動力と表現力を持ちながら、小型で長時間稼働を両立したSuperMiniの組み合わせです。これにより『手軽に良い音を持ち出せる!』というのを実現できていて、変な話ですが、持ち出し機器の体積当たりの音の満足度はかなり高いように感じます。
当然、体積当たりのパフォーマンスなんてものを競う競技は無いので、各人がどこまで運搬時の大変さを許容できるか、ということになるわけですが、HIFIMANのこの2つの製品を見ていると、気軽にポケットに入ることの重要性を説いているように感じます。
HIFIMANにはこのほか、重量級のHM802Uもラインナップ(とはいえディスコンになっていますが、何か新商品が出るのかな?)しており、室内、もしくはサイズが許容出来て、さらなる音質を求める人はこちら、というように住み分けがなされていると思っています。
HIFIMAN JAPANの公式サイトとしては『これひとつでフルサイズヘッドホンも大丈夫だぜ!』としていますが、駆動力はAKG K612PROで試す限り『足りる』というレベルは達成しています。最高の音質かどうかは他のハイエンド系もしくはHM802Uを試したことがないので、ここの評価は保留とさせていただきます。
〇まとめ
HIFIMAN SuperMiniは明確なサウンドキャラクターを持った小型軽量でポータブルしやすいDAPです。中低音域の厚みや充実感がありつつ、ボーカル域の上手さが両立出来ていて、聴きやすく、良い音で聴いているという満足感が得られると感じます。
さらに高性能な環境で音楽を楽しんだことがある人のメイン環境とするのには物足りないかもしれませんが、お手軽持ち出しセットとしてはこれ以上ないパッケージングかと思います。この辺りは、各人の『持ち出せる許容サイズ』によって商品を選択していけばよいかと思います。
価格も薄型・小型のDAPで音楽を良い音で聴きたい!ということを最重要項目としたときに、同価格帯に位置する競合商品に対して優位点があると感じますので、そのような要望がある方は、一度手に取って試してみる価値はあると思います。
ちなみに、私としましては、レビューをする都合、ここまで特徴のある音ですと使用しづらいという側面もありつつ、コンパクトで使いやすいパッケージングと、この価格は非常に魅力的で、なかなか悩みどころだなぁと思っている次第です。
ちなみに、2017年5月に行われました関西ファンミーティングにて、HIFIMAN社長とお話しさせていただいた内容を、対談形式にまとめてありますので、こちらもどうぞ。
ラベルのヘッドホン・イヤホンから他の商品のレビュー、またはラベルの買い物かごの中身から各種レビュー記事が閲覧できます。