最もリーズナブルなシリーズはプラ筐体でチューニングは同じ、というのがこれまでのラインナップでしたが、今回紹介するプラ筐体のDH298-A1Buは低音を抑えた新チューニングということです。
個人的な感想として、従来のA1Bkは試聴程度しか確認していませんが、低音が強すぎると感じていたため、このあたりがどう変更されたか見てゆきたいと思います。
※スポンサー
レビューに関する決め事はこちら
〇無理矢理一言雑感
低音によるノリの良さと音の近さがあって、全体的に価格なりの性能
〇サトレックス Tubomi DH298-A1Buとは
大阪のHOSIDENという電子・電器部品メーカのオーディオブランドになります。と説明するよりも、低価格帯を中心にイヤホンとヘッドホンを製造販売するSatolexの、Tubomiシリーズは低価格帯で話題に挙がる機種と説明した方が通りが良いかもしれません。
Tubomiはハウジング材料違いでいくつか種類があり、微妙に値段が違う展開で、金属筐体のもので少し高いものやプラ筐体で色違い、というような商品ライナップです。これまでは筐体材料が違うと音が違う、という雰囲気で、プラ筐体は音は同じというスタンスでした。
今回の新作のDH298-A1Buは、プラ筐体のチューニング違いということで発売されました。通称として青Tubomiなどと呼ばれているようです。A1Bkでは、低音も出ているがボーカル域も良い!という評判がある一方、低音が強いとの意見があり、A1Buでは低音を抑え気味にした、とのことです。A1Bkは試聴程度ですが、Buはこの辺りを中心にレビューしてゆきます。
ステム径は太い物で、イヤーピースの社外品はほとんど使えないと考えた方がよさそうです。イヤピの傘がやや浅く、個人的にはもう少し深さが欲しいところ。ケーブルは、細かな刻みが入っていて絡み防止になっています。また、ケーブルは復元力があり、クセは付きにくく絡みにくいのが良いです。筐体も軽いのでイヤピが合えば装着感も悪くないです。
〇Satolec Tubomi DH298-A1Buレビュー
紹介する商品はこちら。価格などもこちらへ。
■全体の印象
ドンシャリ。低音の量は多めでやや柔らかく、高音はボーカルの高い音程ぐらいから立ち上がって、かなり高い所にピークがある。ボーカル域周辺がやや柔らかく、少し丸まって聴こえる感じがある。全体的に柔らかい表現にシンバルの鋭さが乗る印象で繊細な表現は苦手。
どの楽器にしろボーカルにしろ、比較的自分に近い所で鳴っているような印象を受け、空間的な広がりは控えめ。キック、スネア、クラップが明瞭で、低音の強さがあり、重低音もそれなりに出るため、EDMを音量大き目で聴いた時には迫力とキレがある。また、ある種の音の近さがこれらの音源に適すると感じ、その時には低音および中低音の飽和感もあまり感じない。音量は取りやすい。
■各音域の印象
低音は中低音にかけて多め。重低音はそれなりに出ている。低音域での大きな凹凸は感じない。バスドラのアタックは弱めで、やや柔らかい印象。EDMやテクノなどで良く聴かれるキック(あれもバスドラだけど)は、もう少し高い音程になって、少し締まりがあるような鳴らし方となり、音源による印象の差がある。中低音にかけて強めなので、ベースが明瞭で音程が取りやすく感じる。
高めのスネアの音は、ドラムヘッドを叩くバチンという音が明瞭。(バスドラも、バチンという音が大きいと明瞭に聴こえる。)低めのスネア、高めのタムは中音域に入ってきてやや柔らかい。シンバルは明瞭で派手な鳴らし方。キツめに鳴る楽曲では明瞭で鋭く、やや近く、刺さり気味。サスティーンはそれなり。細かなアタックなども鳴らす。
ボーカルは量はそれなりで明瞭と判定するレベルに入っている。息の音は鳴らし、リップノイズは少なめで、生っぽさは控えめ。やや輪郭が甘いような表現で、曇っているというと言い過ぎかもと悩む。ベースと高音域が派手な楽曲だとボーカルが奥まって聴こえがち。女性ボーカリストの『し』『ち』の音など、特定の音で少し刺さりがある。女性ボーカルの音域あたりに周波数応答の山谷があるのか、音程によって明瞭さや強さが変わりクセを感じる。分離は価格なりと評価するか悪いと評価するか悩む。
エレキギターは、ディストーションのエッジ感はやや丸まる。強くコンプを掛けたようなピッキングが丸まった感じを少し受ける。その結果、軽やかなカッティングが印象的な曲では、楽曲全体にキレが足りずに物足りなく感じやすい。エッジの立ったキレのあるセッティングだと、高音の持ち上がってくる領域に入って鋭さが出てくる。
バイオリンは、少し柔らかで丸い感じの音で、弦をこするザリッとした成分は多少鳴らす。楽器由来の響きは少な目。ホールの残響も少なめ。基本的に近くで鳴っているように感じるが、音程によってさらに近く(脳内定位に近い)感じることがある。
サックス、トランペットなどは音抜けが良く、どちらかというと暖かい鳴り方だが鋭さもあってなかなか良い。ピアノは全体的に奥まった印象になりがち。そのため、ウッドベース、ドラム、ピアノ、サックス(もしくはトランペット)という編成の場合、ウッドベースの主張があり、サックスが前面に出たような鳴り方となる。
大雑把な聴こえ方は普通はボーカルが強いことを念頭に置いてもらって、
ベース&バスドラ≧ボーカル≧シンバル>ギター≧ピアノ
ベース&バスドラとボーカルの大小は、音量差というより印象の差(明瞭さの差)という感じ。
■その他聴こえ方
録音の粗は感じにくい。サーノイズは鳴るが目立ちにくい。
最初に書いたが、EDMなどを聴いてみると、非常にマッチして音抜けの良さやバランスが良いと感じる音源があった。低音から中低音が強く、高音域の鋭さがあるイヤホンがこのような傾向になることが多く、音源とのマッチングによっては評価が高まる可能性がある。
一方で、ベース・ドラム・ギター・ボーカルといった古典的な編成の音源では、やや分離が悪く感じることが多く、特に、数人のボーカルによるユニゾンがのっぺりとした印象となることが多かった。空間的な広がりが少なく、やや狭く聴こえるのが影響しているように予想される。(これが逆に、先のEDMなどへの適性の理由になっている可能性はある。)
※スポンサー
■お勧めできる人
低音の強さ、近さを求める人。EDMなどにおいてマッチングが非常に良いと思う打率の高さがあったので、好きな人は試してみても良いだろう。また、サックスやトランペットを中心としたジャズが好きな人は、全面に出てくる感じがあり、合うかもしれない。
■お勧めできない人
ボーカルの音抜けを重視する人。ボーカルの音域がすごく悪いわけではないが、同じ価格帯で抜けの良さ、明瞭さやクリアさが勝っている機種があるので、それを求めるなら別の選択肢があるだろう。低音は強めだが、さらに低音が欲しければDH298-A1Bkを試したほうが合うかもしれない。
■雑感
実は、慣らし50時間程度まで印象がかなり悪かった。というのも低音は柔らかくて強めで、ボーカルは奥まっているが特定の音やシンバルの刺さりが結構目立って、減点対象として気になったりしたためである。そこで、150時間ぐらい入念に慣らしをした結果、低音はやや整理されて刺さりも落ち着いてきた。その分、ボーカルの少し高い音程でのキレや派手さが落ちたともも言える。
レビューからやや悪い印象を与えるかもしれないが、レベルが底上げされてきている現在の低価格帯において、順当な値段と能力だと感じている。なので決して悪くないのだが、欲しいと思える加点要素(独自性や強み)が少ないのは否めない。
試聴程度で申し訳ないが、比較検討用にA1Bkも試してみた。A1Bkは強い低音という特徴があって、低音が強いために中音域の篭り感も気になりにくく、これはこれで訴求力があると感じる。一方、A1Buは低音がスッキリした分だけ中音域の柔らかさが気になりやすく、他のイヤホンに対する明確な特徴(優位点)を私には指摘できずにおり、すこし厳しい評価になると考えている。
また、このキャラ付けがピッタリとハマるジャンルというのをハッキリ見つけられなかった。それを私の中で見つけることができれば、このレビューを大幅に書き換える可能性がある。
〇買い物かごの中身の評価
大雑把なお買い得度を評価する指標です。基準はこちらから。
お買い得度 ☆★★★★
使い勝手 ☆☆☆☆★
お勧め度
一般 ☆☆☆★★
趣味人 ☆★★★★
コメント
お買い得度は4000円弱で購入として判定。価格比で悪くないが定価5000円よりも落ちるし、3500円で特色のあるイヤホンに総合的な魅力で拮抗すると考えて☆1つ。A1Bkも初価は約4000円で2017年8月で3500円になっており、ここまで下がれば☆2つ。使い勝手は、ケーブルの絡みにくさがあり、小型軽量で、左右の判別が付きやすい点が高評価で☆4つ。イヤピの傘が浅いタイプなので、自分にフィットするかどうかは確認した方がよさそう。
一般へのお勧め度は、価格比で悪くはなく、スマホでも鳴らしやすくて、先の使い勝手の高評価と同等の理由で☆3つ。取扱店も多く試聴しやすく保証も受けやすいのも加点要素。趣味人には、1万円以上のイヤホンを持っている人のサブになりうるか?を判断基準とした時、厳しい言い方だが、これでなくてはならない理由は私には指摘できない。☆1つ。
全体的に私自身の好みに合っていないので低評価になったと思っていただいて良い。逆の視点から見ると、好き嫌いがバッサリ分かれる可能性があるイヤホンである。
ラベルのヘッドホン・イヤホンから他の商品のレビュー、またはラベルの買い物かごの中身から各種レビュー記事が閲覧できます。