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2024/02/17

実検するおじさん

作りの良さが光る、クリアなサウンドが特徴のSAITO GUITARS S-622CS[レビュー]

「美しい道具」をコンセプトに実直な作りのギターを提供するSAITO GUITARSのS-622CSを購入しました。
実は購入したのは23年の夏(記事執筆は24年2月)で、ストラト経験が浅い故に音作りや扱いに慣れておらず、音作りが迷子になってしまっていました。要は歪ませすぎだったのですが、そのあたりの「美味しいサウンドを引き出すコツ」が分かってきたのでレビューを書きました。半年以上使ってきたので、長期使用レビューと言えるかもしれません。

さて、まず弾きやすい!ストレスが無い!調整に素直に応える!と良いギターだと強く感じました。サウンドをはじめ、その他メンテナンスやカスタマイズに対する反応などをレビューします。


○購入したきっかけ


 SSHの「とりあえず1本なギター」が欲しいと感じたから。また、ストラトタイプもそろえておきたかった。購入当時は、ストラトタイプはモダンで現代的なタイプが良い(欲しい)と感じていたから。

 弾いてみた感じが非常に好感触で、購入を決断しました。


○購入時の決め手となったこと


 変に妥協して後で買い替えるのはもったいないと思い、その店にあったSuhrのクラシックアンティーク(コアライン 価格はS-622CSの約2倍)と弾き比べさせてもらいました。まず、弾きやすさ(調整)に関して言えば優劣無し。Suhrのラッカーのぬめっとした質感と、SAITOのさらっとした触り心地の好みの差だと思いました。全体から漂う雰囲気は、Suhrクラシックアンティークのウェザーチェックなど説得力というか高級感がありましたが、そもそも価格が違いますし比べるのは申し訳ない。ただ、全体から漂う端正さはSAITO GUITARS S-622CSも負けておらず、潔さやツール感があって良いと感じました。

 肝心の出音の比較です。試奏時のアンプはマーシャル JVM210。SuhrはMLが載っていたようで、結構太く甘く、ヴィンテージ感が強い印象でした。対してS-622CSのネックPUでスコーンと綺麗なクリーンが出て、アンプをクランチ設定にするとプレーン弦の煌びやかさとか鋭さ、スプリングの残響感が載りながら歪むサウンドが出て「私の思うストラトサウンドだ!」と感じました。
イメージは3:10あたり。この動画はハードテイルなので、イメージよりもソリッドでタイトな音がしています。

というわけで、Suhrの良さを認めつつ、自分の欲しいと思ったサウンドが出ると納得したS-622CSを購入しました。良い経験でした。


○全体的に質感やネックのグリップなど


 とにかく全体の作りが良い。「作りが良い」って抽象的なので自分の感覚を言い換えると「端正さがあって、ここが雑かも?と思うところが無い」という意味です。ネックの取り付け部、ヘッド周辺、指板サイドの仕上げ、フレットの仕上げ、ボディー全体、ボディー裏のトレモロスプリング用のキャビティなど、そもそもの仕上げが丁寧なのに加えて、雑になりにくいような、仕上げが正しくなりやすいような設計がされているように感じます。どこを触ってもバリや変なエッジが無くて触り心地が柔らかい。でもピシッと角は立っている。「雑かも?」と思う部分が無く、丁寧に仕上げているから端正さに繋がっているのだと思います。

 シェイプはトラディショナルなストラトをベースにしながら、わずかにコンパクトになっています。が、並べてみないと気が付かない程度です。この微妙な差が効いているのか、抱えやすさがあります。小柄な女性や若年層にもマッチして、大柄な人でも小さすぎないサイズ感かと。

 ネックは、ローフレット側が厚みのあるCシェイプで、ハイフレット側に行くにしたがってやや薄く仕上げられています。ナット幅は平均よりも少し狭いかも。シェイプが絶妙なのか、どのポジションも押さえやすいです。弦高調整がバチっと決まると、どこのポジションも演奏しやすい。何人か(そこそこギターを買い替えた経験のある人々)に弾いてもらったところ、皆、弾きやすさに驚いていました。


○サウンドのレビュー


 生音の印象は、太く柔らかく、豊かに鳴る印象です。アルダーとローズの組み合わせによるところでしょうが、平均値よりも太いサウンドなのでは? 弾きこんでゆくことで高音の軽やかさも出るようになってきました。さらに弾きこむとまた印象が変わるかもしれません。

 さて、肝心の出音。特徴的な点はネックポジションのクリアさと音抜けの良さです。センターも同様です。ピックアップはSAITOのGrowl。巻き数多めのセットだそうです。エッジの出るアンプでわずかに歪ませてやると、甘さとクリアさがちょうどよいバランスで鳴ってくれます。すごく気持ちが良い。ポイントは、クリアで抜けが良いけど、鋭すぎるとか味気ないわけではない点です。ネックPUの甘さも残っている気がします。なお、シングルコイルはスタガードタイプで、見た目はヴィンテージ風ですが、サウンドの印象はかなり異なります。

 ブリッジのハムバッカーはBore Up。こちらも巻き数多め。リアハムは出荷時設定のポールピース位置では結構太く、中音域が強いです。ネック/センターがクリアな傾向で、ハムが太いため、シングル2発とリアハムのサウンド傾向が近くなっている印象を受けました。ネックっぽさ、リアハムっぽさは残しつつ歩み寄っている感じ。そのため、ネックPUで気持ちの良いクランチ設定にした状態でリアハムに切り替えても違和感の無い音作りができます。

 一方、ワイドレンジで全域を持ち上げるような歪み系で強く歪ませようとするとブーミーになりがち。(出荷時設定) ストラトのリアハム(トレモロ:フローティング設定)なので、タイトでエッジの効いた低音は出ないのは分かりつつ、中音域が強いのを感じます。「S-622CSのリアは結構歪ませても使える」とのレビューを見かけますが、個人的には「そうでもないのでは?」と感じました。強く歪ませて使うにはミドル・ローを強めにカットする必要があると感じます。古典的な、例えばDS-1とかなら良いかもしれませんが。

 このあたりの音作りでしばらく悩んでいたのですが、最近になって「フロントと同じような考えで音を作れば最高じゃん」と思うに至りました。(その後、3、4弦ポールピース高さを低めに、相対的に1、6弦を高めにしたところ、ドンシャリ系のシャキッとしたサウンドになりました。)

 コイルタップ時はトーンが効かない設定です。コイルタップのサウンドは細くなり過ぎず、普通のシングルっぽい。シャキッとしたサウンドでブーミーさとは無縁です。


○調整に素直に反応して、その影響が敏感


 弦高やネックなど、最初からバシッと決まっていますが、音作りに迷ったときにいろいろと弄ってしまいました。すると、少し調整するとそれに素直に従ってくれて、しかもサウンドに大きく影響する敏感さがありました。

 一番驚いたのが、スプリングをESPのTYPE1に交換した時です。
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ESP TREMOLO TONE SPRINGS Type-1 (5本セット) スプリング
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 オリジナルのスプリングは3本で、バネ定数はかなり高め。硬いバネはストレートでエッジの効いたサウンドになります。ESPのスプリング TYPE-1は割と普通のサウンドを狙ったものですが、交換してみるとフロントが太く、ヴィンテージテイストが強め。ネック/センターはヴィンテージテイストに味変というイメージで良いものの、リアは太くなりすぎて却下となりました。スプリングがサウンドに与える影響が大きいとは分かりつつ、それにしても差が大きかったので、S-622CSは少しの変化に敏感だと感じました。


○サウンドバランスが深く作り込まれていると思うSAITO GUITARS


 先ほどの、スプリングの変更もそうですが、全体のサウンドバランスを作りこんで完成されていると思いました。トレモロブロックがFSTブロックと呼ばれる細くコンパクトなタイプです。一般的に、トレモロブロックはスチールが良いとかブラスの方が良いとか、重い物が選定されがちですが、それよりも軽量でコンパクトです。FSTブロックはトレモロを操作した時にチューニングずれを防止する構造なので、それを狙っていると当初は思っていました。(たぶん、それも目的)

 しかし、スプリングを替えると甘く太くなる感じ(S-622CSの印象が変わってしまう)なので、軽量なブロックでS-622CSのシンプルで抜けるサウンドを作りこんでいるのかな?と思った次第です。これは想像の域を出ませんが…。とすると、各所の部品変更が狙っているところから大きく変化してしまう可能性があるな、と思ったりしています。

 そのほか、テレキャスっぽいヘッド形状ですがハーキュレスのようなロックタイプのスタンドもしっかりとグリップしてくれます。テレキャスだと嚙みこんでくれないんですよね。ストラップピンも大きめで抜けにくいものです。このような使い勝手の点の細かな「煮詰め」を感じます。




自分の音作りやギターの腕を上げつつ、各所の微調整・微改造(配線変更やコンデンサ変更)でサウンドの微調整をしてみたいと思います。