MXRのトップビルダーチームがBOSSのDS-1をベースに作ったらしいと噂のモデル。似てるかどうかは別として、オーソドックスなディストーションサウンドを鳴らしつつ、厚みがあって、サウンドの幅が広いです。また、ボリュームに追従して歪み量の調節が利く点は良いです。昨今の人気ペダルの条件ですね。中古相場ではやけに低価格で取引されていますが、もうちょっと注目されても良いのでは?と思います。
〇なぜ買った?
切れ味のある歪み方のオーソドックスなディストーションが欲しかったから。これまで、ニュアンスが出るだなんだという上級者向けのオーバードライブばっかり買っていて、分かりやすいディストーションが無かったので購入しました。
MXR Custom Badass '78 DistortionはMXRのトップビルダーチームが永遠の定番であるBOSS DS-1をベースに開発したのがこちら、と噂されているのです。スタンダードなディストーションが欲しければDS-1を買えよ、とも思うのですが、DS-1は超えてくるでしょうということと、中古市場でやけに安く出回っているんですよね。なので買ってみました。良い品だと思うのですが…
〇MXR Custom Badass '78 Distortionを弾いたレビュー
似てるかどうかは別にして、DS-1と比較すると'78 Distortionの方がハイゲインで低音が出ます。ジャキっとした歪み方は近いので少なくともクリッピング方式は近いのでしょう。(DS-1は今は持っていないので直接比較できず)
'78 Distortionは設定の幅が広くて、ローゲインでトーンを上げて抜けを良くしたり、ハイゲインでトーンを絞って厚みのあるサウンドにしたり。歪みの鋭さはローゲインでも変わらずで、オーバードライブの印象が強くなります。ジャキっと高音も強いように感じます。その分、トーン+ゲインMAXにすると(私の環境では)コード弾きは潰れてしまってダメ。
好きなポイントは「軽めに歪ませたアンプに歪みを足すような設定がすごく良い」ってことです。このあたりはディストーションのお手本みないなモデルだなと思います。
「CRUNCH」ボタンで中高音が持ち上がって抜けが良くなる印象です。ハムバッカー使用の私は、個人的にはオンを推奨したいです。シングルコイルギターで厚みを重視するにはオフの方が良いかもしれません。
良いと感じたのが、ボリュームによる歪み感の調整が利くこと。ソロ向きなハイゲイン設定にしてから、ボリュームを少し絞って弱く弾くとクリーンになります。ただ、アンプをクリーン設定でこれをすると、歪むか歪まないかの領域でジリジリとした歪みが出て好ましくありませんでした。そこで、アンプをほんの軽く歪ませた状態にしておくと良い感じになり、軽く歪ましたバッキングからボリュームアップでリードと調整が利くようになりました。ボリュームへの追従性は昨今の人気モデルのひとつの条件みたいなところがありますので、この点はもうちょっと評価されるべきでは? ここまで期待していなかったのでうれしい誤算でした。
ボリュームの追従性といえばトランスペアレント系が挙げられますが、あっちはサウンドバランス(音域の強弱)の変化が少ないタイプ。こちらはガッツリと中高音が持ち上がっています。トランスペアレント系の評価が高いペダルってクセが少ない分、設定がなんか難しいのと、ギターが上手くないと格好良く決まらない印象があります。(私がへたくそなだけですが。)'78 Distortionはそれらよりも使いやすいです。
楽器店での買い物のついでにDS-1を久しぶりに試奏させてもらったのですが、DS-1も良い音しますね。ただ、どうやってもDS-1の音になる印象でした。それに対して'78 Distortionはもうちょっと調整幅が広くて、もうちょっと弾き方とか機材の違いが出るように思います。成立しないセッティング(ゲインもトーンも上げる)があるのも同様です。
〇MXR Custom Badass '78 Distortionについて考察
'78 Distortionは2011年発売なのですが、その頃(2009年とか)のMXRの歪み系って往年のモデルばかりで、流行に乗ったようなモデルって無かったような記憶があります。実際に他のモデルの発売年を調べてみても、08年あたりから名作のカーボンコピー等の発売が始まって盛り上がってきてはいたものの、歪み系の新作ヒット(今でも残るようなモデル)が少なかったようです。MXRの歪み=Distortion+ってイメージでしたね。意欲的な新モデルを発売し始めるのはもう少し後のことです。
2010年頃って小規模エフェクターブランドが乱立し、ヴィンテージ部品を突っ込んだ高価なモデルや、定番商品を改造したものが多く販売され、特に魔改造したもの(Soul Power Instrument設立が06年だそうで、09年あたりには楽器店に納入して知名度も高かったと思う)も市民権を得てきていた時期だと思います。
MXRは、それらとは逆の工業製品的で堅実な製品のジャンルになりますが、同じジャンルでBOSSが7000円程度で定番商品が買えるので、それより高価なラインナップのMXRは結構なピンチだったのではないか?と個人的に感じますね。(そういえば「MXRってBOSSより高くて、小規模ブランドよりも特徴が無くて微妙では?」と思ってた記憶がある。)
こういう状況の中で「みんなMODモデルが許容できるなら、MXRも本気出しちゃうぞー-!」ってやつのひとつが78 Distortionだったのでは?と考えています。
〇評価は?
良いエフェクターです。スタンダードなディストーションとして活躍してくれそうです。元となったとされるDS-1よりも厚みが出て音量も稼げるとされており、後出しなんだから優れていると考えて間違いないでしょう。しかし、DS-1の価格が6600円と安価であり'78 Distortionが14000円程度であることと、家で低音量で楽しむ範囲でそこまで差が出るか?と考えると、'78 Distortionが圧倒的に強いか?と聞かれるとは難しいです。DS-1が安すぎるので相手が悪い。サウンドの良さは間違いないし、DS-1よりもカバーしている範囲が広いことと、昨今のエフェクターは20000円台も当たり前になっていることを考えると、'78 Distortionは十分に魅力的だと思います。
ポイントは中古価格。それなりに売れて玉数があって人気が無いのか安い! 楽器店の中古でも8000円程度で買うことも可能です。DS-1の公式カスタムであるDS-1Wが18000円であり中古の値段も落ちにくい状態から比べて、この値段は優位だと思います。