今回は、電験三種、第一種衛生管理者、危険物取扱者(乙四)取得と、技術士一次試験(電気・電子分野)合格済み(その他もちょくちょく持っている)の私が、電験三種の難易度について詳しく検討して解説する記事となります。
電験三種を分類すると
電験三種は特定の業務において資格保有者が法的に必要な資格です。同様の資格で比較的簡単なところでは、危険物取扱者(乙四など)や衛生管理者、一番難しい所では司法試験とか弁理士試験がこれに分類されます。
対して、業務に必要とされない資格もあります。技術士一次試験(資格ではないが)やITパスポート試験などです。これは単純な自己啓発や、それに合格するレベルの能力があることを職場や就職活動時に示すために受験されます。(技術士は二次試験まで行くと事情が変わってきます)
電験三種の特殊な事情
色々な資格に合格経験のある私が、電験三種が少し特殊だと感じた点は次の二点です。
・資格保有が求められる業種が限定的
・しかし資格が欲しい人は結構多い
資格保有が求められる業種が多い例は衛生管理者(第一種合格率約45%)や乙四(合格率約40%)です。衛生管理者は少し大きめの工場や電気・ガス・水道関連、清掃業、運送業の他、金融、保険、営業、スーパーマーケットなどでも幅広く必要とされています。乙四もガソリンスタンドのほか、ちょっとした工場では必要とされる場合も多いです。
これに対し、電験三種の資格保有が求められるのは、ビルメンテナンス(電気設備関連管理)や、工場その他への大型の製造設備等の導入管理などです。逆に言うと、必要とされるのはそれぐらい。
このように、電験三種は限定された業種しか求められていません。しかし必要とされる絶対数はそこそこ多いです。ビルメンテナンスなどでは給料が上がる資格として有名ですし、転職にも有利とされているのは実際に必要とされていることを示しています。(私の務め先では資格保有者を部署で融通したりするぐらい不足気味。)
電験三種の難易度を合格率から考える
電験三種は四科目からなる試験で、各科目は科目合格が認められます。科目合格したら、その科目は再受験時に免除されます。(詳しいルールは後述) なお私は、令和二年に二科目、令和三年に二科目合格して資格を取得しました。
令和3年度の合格率は以下となっています。
・合格者 11.5%
・科目合格者 32.5%
令和3年はコロナ禍まっただ中で受験者数が少ないにも関わらず合格者が多い年でした。例年だと合格者10%以下で、科目合格25%以下ぐらいとなっています。おそらく令和3年はアタリの問題であったことと、自粛によって勉強時間が多く取れた人が多かったのだと思われます。
さて、電験三種はちょっと特殊だと思うと述べました。それと難易度がどう関わるのか述べます。
電験三種は、特定の業種に従事していたり転職を見据えており、取得を強く望んでいる(頑張って勉強する)人が多い試験なので、不運にも不合格になった人も本気で準備してきた人が多い、というところに注目すべきと考えます。受験者の全体的な合格意欲=本気度が高いと私は考えています。
自分が試験会場で見たり、話しているのが聞こえてきたりする話を統合すると、衛生管理者や乙四(私は両方取得済み)は会社から受験させられたという境遇の人も多く、試験直前も勉強していない人が結構多かったです。対して、電験三種は使い込んだ参考書を直前までチェックしている人がかなり多い! そう考えると合格率を比較するだけでは難易度を計ることはできないと感じています。
合格意欲の高い試験を考えてみます。技術士一次試験は業務に必要という訳ではないので、受験者は自己研鑽でわざわざ受験していることになります。よって全体的に合格意欲が高い試験であると考えられます。技術士一次試験の合格率は分野によって異なりますが、大雑把に40~50%です。
この数字を元に、受験者の合格意欲が高い試験だと私が感じている電験三種の合格率を照らし合わせます。すると、電験三種の合格率は技術士一次試験の合格率の1/3~1/4となります。ここから、少なく見積もって電験三種は技術士一次試験の3~4倍難しいと考えて良いのではないか?と感じています。(体感でもそれぐらいは難しい)
ちなみに、単に合格率を比較する意味がない理由も少し示しておきましょう。先に示した通り、乙四の合格率は約40%です。また、技術士一次試験の合格率は40~50%です。では、乙四の方が難しいか?と問われると違います。明らかに技術士一次試験の方が問題難易度が高いです。このことから、受験者の層や全体のレベル、意欲なども勘案しなければ難易度を計ることができないと分かるでしょう。
電験三種合格に必要な勉強時間の参考値
参考までに、電気電子分野技術士一次試験合格者レベルの基礎学力がある私の例での勉強時間を示しておきます。
電験三種については、ある程度は関連する知識を持った上でのチャレンジでした。ただ、試験問題と直結するような業務経験はありません。当然ですが、電気系の基礎を学んだことが無い人は、ここからさらに勉強時間が必要となります。
電験三種合格に長い勉強時間が必要な理由
長い勉強時間が必要な理由も考えましょう。電験三種の試験時間は4科目合計で335分=5時間半の長丁場です。しかも、試験時間をフルに使う印象で、それほど余裕はありません。なので、過去問を勉強する際に、ある程度勉強した状態で5.5時間分の問題をしっかり理解するまで取り組むと5.5時間以上必要(経験上は2倍の11時間ぐらい必要)です。10年分の過去問に挑戦するだけで110時間です。これを繰り返したり、必要な基礎部分についても勉強して補強します。困ったことに、電験三種は問題バリエーションが多くて、勉強時間も長くなりがちです。
ちなみに、第一種衛生管理者試験は3時間ですが問題は1時間以内に解けます。なので、先と同じように考えると10年分の過去問に挑戦するのに20時間ぐらい。同じ問題もそこそこ多く、その分、勉強が楽になって必要勉強時間も短くなります。
この試算を比べると、電験三種は衛生管理者の約5倍の時間が必要となり、自分の経験ともだいたい一致します。一回で覚えられる人ならまだしも、普通はこれぐらい必要かと思われます。
電験三種は科目合格できるが…?
電験三種は理論・電力・機械・理論の4科目で構成されており、科目合格が有効です。科目合格すると次の2年は科目合格が有効です。これは結構助かりますが、頼り過ぎるとダメだと感じます。
というのも、科目合格の有効期限は2年なので、どこかのタイミングで1回に2科目合格以上取らないと資格合格になりません。科目合格率が25~30%ですから、そこそこ難しい試験を1度に2つクリアしなければならないことになります。ベースが無い人の場合の一度の勉強量を考えて、「1年2科目ずつ合格狙いの二年計画」が現実的では?と感じています。
有効期限が2年なので、油断しすぎると最初の1年から最悪は+2年間勉強をする必要があります。これは結構ハードです。
※補足
2022年度から年2回試験に改められることとなりました。科目合格の有効期限は2年のまま。これにより、1回の試験で1科目合格を狙う作戦もできるようになります。ただし、それだけ受験料が必要となりますし、2年間ずーっと勉強するようなスケジュールになるので、これはこれでハードだと思われます。
電験三種の難易度はかなり高いぞ!
かなり脅すような文章になってしまい申し訳ありません。この記事を書いた理由は、難易度についてフワッとした解説しか見当たらないと感じていたためです。数字だけ見ても比較できませんし、電験三種だけの受験経験だと比較もできません。私のようにいくつか受験経験のある人が深堀りする必要があるのでは?と感じたためです。
また、ここまで深堀りしたのは、(実務でこの内容を扱っている人以外は)かなり本腰を入れて勉強しないとクリアできないので本気で頑張ってほしい!という思いからです。
電験三種は、取得をきっかけに転職したりステップアップしたりと活用されている人が多い資格です。必要と感じる方には、早め早めに勉強を始めて、是非とも頑張ってもらいたいと思っています。
↓私が使用したテキストはこれ! 電気といえばオーム社。
↓私が買った過去問は10年分の全問題が掲載されているものでしたが、選別されて解説するものに変わった模様。
買ったのはこれだけで、これで合格できたのは事実ですが、ちょっと不十分です。テキストに出てくる計算式の意味や、なぜその式を使うか、用語の詳細な意味、原理詳細などは、ネットで補完する必要がありました。