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2023/09/17

実検するおじさん

EP Boosterのスイッチの活用方法とDIPスイッチセッティングを考察・解説する

地味でしっかり歪むわけではないのに支持が厚く、ロングセラーで、初心者の頃は「????」となること請け合いのエフェクターXotic「EP Booster」
今回は、そこに搭載されている小型のDIPの機能の説明と、繋ぎ方、その時の設定について考察して解説します。
ただ、EP Boosterと言いながらクローンの自作エフェクターでの考察で申し訳ない。

お試しで作ってみたところ、想像以上に良かったので本物を追加購入するとか色々考えている次第です。



〇EP Boosterのサウンドを決めるポイント2つ


 EP BoosterはFETを使った増幅とバッファーが連なった構成です。操作系はエフェクターのオンオフのフットスイッチ、ゲイン(≒ボリューム)、ケース内にDIPスイッチが2つついています。

 DIPスイッチ1の役割は低音域をカットしてから増幅するか、カットせずに増幅するかを決めています。パスコンの容量を変化させていて、オフで10uF、オンで10+100uF=110uFとなります。
 過去モデルではLowブーストと表現されていたのが、現行ではゲイン調整と表現が変わったようです。その際に容量の見直しはあったのかもしれませんけど、説明の表現を変えただけで回路自体は変わっていないのでは?と思っています。

 DIPスイッチ2はローパスフィルターのカットオフ周波数を変化させて、高音域のカットの具合を切り替えています。オンで1kΩ+3300pF→カットオフ周波数48kHz、オフで16kΩ+3300pF→カットオフ周波数3kHzです。

 人間の可聴域を考えるとオン状態はカットしない方向です。ギターの1弦の22フレで1.2kHzだとするとオフ状態では影響が無いように見えます。このあたりについてちょっとだけ詳しく述べましょう。

 まずアナログのローパスフィルターは、ある周波数から徐々に通過できなくなる回路であり、バサッと急に音が出なくなるものではありません。カットオフ周波数とは、徐々に音が通れなくなって-3dB分だけ出力が下がった状態となる周波数を指しています。ちなみに、そこそこ大きい入力であれば-3dBってそれなりに聴こえるレベルです。先に書いたように徐々に音が通りにくくなるので、カットオフ周波数3kHzだとして、3kHzの通過の具合と6kHzの通過の具合は後者の方が通過できない(カットされる)状況となります。

 ギターで普通に出せる音の基本周波数の最高が1.2kHzなので3kHzのカットオフだと影響が無いか?というとそうではありません。弦が擦れる音、ピックのアタック音、ピッキングハーモニクスなどはそれよりも高い音ですよね? そこには影響してきます。ここまではクリーンの話でしたが、歪ませると話が変わってきます。音を歪ませることは基本周波数に高い周波数の音を付け加えることと(大雑把には)言い換えられます。エッジの効いたディストーションは高周波が多めで、滑らかなオーバードライブは少なめ。よって、カットオフの具合によっては歪みのキレの具合が変わってきてしまいます。


〇EP Boosterの活用方法 3種類


 使い方は自由ですが、個人的には3種類の活用方法を想定しています。

 1つめは、歪みの前段に置いてブーストして歪みを増す方法です。EP Boosterの厚めのサウンドによって、歪みを深くしながら太さも出します。この時のDIPスイッチの設定は、わりとどこでも良くて好みで選べます。汎用性なら両方オン、太くするならDIP1をオン、逆にハイミッドを持ち上げてキレを出すならDIP2をオンにします。ハイゲインディストーションと組み合わせるとピッキングハーモニクスが出ます(丸くなって曇ったりはないです)。

 2つめは、クリーンのサウンドの味付けです。ジャズを弾く人が、どこにでもあるJC-120を使うためにEP Boosterでサウンドに温かみとか丸さを加えたい場合などを想定しています。これもDIPスイッチはお好みで。両方オフの枯れたというかひなびた感じが良いかと。EPコピーを作るまでは、そこまで効く?と懐疑的だったのですが、これがめちゃくちゃ良いです。

 3つめは、歪みの後段に置いてブーストする方法です。なお、アンプで歪みを作らない想定です。この場合はセッティングがちょっとシビアだと感じました。エフェクターで作った歪みサウンドに対して効くことになりますので、DIPスイッチ2をオフ状態にするとキレが丸くなりすぎます。そのため音抜けが悪化する可能性が高いです。これが好きなら良いですが、ちょっと汎用性に欠けます。アンプ側で歪ませるなら話は変わってきます。セッティングは結構難しいかもしれません。


〇ASSHさんのEP Boosterのセッティングを考察


 ギタリストのASSHさんは頻繁にエフェクターボードの中身を変更しているようで、紹介動画は複数あるものの、毎回ほぼ異なっています。その中で不動の地位についているのが大昔から愛用しているEP Boosterで、これを歪みの後段(ディレイやリバーブの前)に配置しています。

 この動画とは別の動画にて、EP Boosterは「音を太くする用」と説明しています。また、この動画での説明を見る限り、ソロ時に踏む想定で欲しい音量を稼ぐためにボリュームを調整しているようです。サウンドを太くしながら歪みのエッジ感は残しているので、DIPスイッチ2はオンで間違いないでしょう。DIPスイッチ1はたぶんオンですが、使用機材によってオフにしても良いかもしれません。


〇私のEP Boosterの設定方法を決める


 私個人としては、EP Boosterの役割としてクリーンの味付けが最重要だと感じました。その場合、DIP2はオフの方が好みです。DIP2オフの状態で歪みの後段に配置するとモコモコしすぎる!ということで、歪みの前に配置することにします。ゲインはゼロ状態とします。これで、歪み無しならクリーンの味付け、歪みオンで太さやスムーズさを付け足したディストーションサウンドになってくれるという目的です。

 ライブ実戦派の方は歪み後段でソロ時に音量アップがベストだと思われますが、自宅で楽しんで弾く分には歪みの前段に置くことで歪みの奥深さが増すのが楽しいです。

 使い方に悩んでいる人は参考にしてみてください。