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2023/04/22

実検するおじさん

PRS SEの弱点と解決法を説明する[ブリッジのフローティング高さ調整]

PRS SE 35周年モデルを購入して気に入って弾いています。

ただ、純粋なギターテクニックよりも調整とか弄りたくなってくるあたり、プレイヤーじゃなくてエンジニアなんだなぁとか思ったりしています。ブリッジ周辺の調整について調べていると気になることがでてきました。「え、わたしのブリッジ高すぎない!?」
というわけで自分なりに仕上げてみました。
PRS SEのフローティングトレモロブリッジの調整
PRS SEの設計や全体的な作りは良いですが、それを引き出す最終的な調整が甘いように感じます。これが(2020年頃の時点での)PRS SEの弱点です。これを克服する調整を紹介します。



○所有するPRS SE 35th Aniversary Modelについて


 さて、最初に、購入したのはPRS SE 35th Aniversary Modelなのですが、仕様的にはその後にレギュラー商品となったPRS SE Custom 24-08と同じなので、SE Custom 24-08として説明してゆきます。SE Cusotom 24とかでも、ブリッジ構造は同等です。レビューは以下です。

PRS SEなんぞ買ってしまいました。しかも35周年記念モデルです。現在のSE Custom24-08のベースとなったモデルです。適切な調整を受けた個体は非常に弾きやすくておすすめです。



○PRS SE Custom 24-08のブリッジの適正な設定


 SE Custom 24-08のブリッジは本家PRS Custom 24系と同じ構造です。同じではなくて、同じ構造です。微妙にサイズが異なります。なので流用の難易度は高いです。ねじに窪みがついていて、そこでトレモロのブリッジユニットが引っかかってビブラートが安定する構造です。

 プレート自体がボディーと平行の状態で浮いています。この浮き高さは1.6mmです。写真の状態が正常。で、実はこれ、私による調整済みの写真です。


○PRS SEの弱点は調整の詰めの甘さ


 記事タイトルにしました「PRS SE」の弱点は、出荷状態の調整の甘さです。個人店などでバッチリに調整済み品を購入するなら問題ないです。

 では、その調整の甘さですが…、まず6本のねじの高さがバラバラです。(購入後すぐに修正しちゃったので、下の写真は再現です。実際はもうちょいぐずぐずだった。)
PRS SEの調整が良くない件
 そして、適正高さ1.6mmであるのに対して、所有する個体は1.0mmと0.6mmのピックを重ねて置いてこんな感じ。君、3mm以上の高さがあるよね?
PRS SEのトレモロブリッジが出荷状態では高すぎる
出荷状態のトレモロブリッジの調整が不適切で、高すぎます。
参考リンク:PRS公式の解説
もうひとつはナットの成型の甘さですね。これについては次の記事で紹介予定です。


○PRSのブリッジを調整する


 私は機械いじりの経験があるし工具もあるので出来ました。しかし、調整の難易度は比較的高いので不慣れな人はやらない方が良いです。調整が必要だと判断する目安は「ちょうどよい弦高を狙うと弦のコマが下がりすぎている」という場合ですね。
 先ほどの参考リンクでは「完璧に調整されているはずだから、知識の無い奴は触んな」とマジで書いてあります。(調整されているのは本家PRSならば、でしょうが。)残念ながらPRS SEは知識のない人の手によって作られているので修正してやらねばなりません。最初に、6本のねじの高さを合わせます。弦を外して真っ直ぐな小さな定規を当てるなどして調整するのが望ましいですが、この後の調整で弦を張った状態にしなければならず、それも難しい。そのため、プレートからねじの頭の頂点の高さをノギスの深さを測る方で測定するか、目視で調整します。この説明で「どうやって測るの?」「ズレているか見ても分からない」という人は、この調整はやらない方が良いです。まじで。

 ねじの高さが揃ったらトレモロアームで大きく動かして、ねじの窪みとトレモロのエッジが噛むように動かします。ズレている場合は「ガチン!」とはまり込んでくれます。上手く噛まない場合は裏側からブリッジを押したりしてください。次に、トレモロが平行になるようにトレモロスプリングハンガーの締め込み具合を調整してください。私は昔使っていたRaw Vintageのスプリングが余っていたので、今回のついでに交換しました。Raw Vintageはバネが柔らかく、6本でバランスを取ろうとすると6弦側をものすごく引っ張る必要が生じました。そこで、6弦側の2本をPRS SEの固めのばねにして、4本をRVにしています。
PRS SEにRaw Vintageのトレモロスプリングを取り付ける
 平行になったら、この状態で1/16インチ≒1.6mm≒1円玉の厚さだけ、ボディーからトレモロが浮いている状態にします。そのために1円玉をトレモロブリッジ下に配置します。傷防止にマスキングをしましょう。
この状態から少しずつ6本のねじを均等に締めてゆきます。少しずつ均等にです。1本だけやると、またエッジが外れてしまいます。
攻めすぎると1円玉が抜けないのでほどほどにしましょう。できたら窪みに噛んでいるか最終確認して、マスキングも外せばトレモロ部分の調整は完了です。弦高が下がっているのでコマ高さを再調整し、オクターブチューニングをしてください。


○音の変化


 今回の記事では、Raw Vintageのトレモロスプリングも交換した状態で紹介していますが、以下の手順で交換しました。

ノーマルスプリング+フローティング 高 → RVスプリング+フローティング 高 → RVスプリング+フローティング 適正

 RVスプリングにすると響きが豊かになって、俗っぽい言い方をすると豪華な鳴りになりました。若干、基音が目立ちにくくなったと感じる人もいるかも。次に、フローティングの高さを調整した影響を。調整が甘い状態だと、物理的にボディーから離れた位置に力が加わっており力の伝達の経路が長くなっていましたが、調整によってボディーに近づきました。それによるものか、調整後は全体的に輪郭がはっきりしたように感じました。今回の調整は改造ではなくて「正規の位置に移動させること」なので、悪くなることは無いでしょう。


○最後に


 PRS SEは、本家PRSの優れた設計を引き継ぎ、ポテンシャルは高いです。最後の調整が甘い。ここが弱点です。よって、バチっと調整してやると優れた土台が良い仕事をしてくれます。人によっては「楽器屋さんが、最初に調整しておくのが売り手の責任だろ?」と思う人もいるかと思いますが、楽器屋さん側からすると、ヘタクソ店員が勝手に調整して破損すると店の損害ですし、そのまま黙って売りつければ店の信用失墜になりますから、社内規定で禁止されているところもあるのですよ。主に大手。調整済み品が欲しい場合は、それを売りにするこだわりの小規模店舗を探すほかないですね。

 今回紹介した調整+ナットの調整は、リペアのできる楽器店であれば5000~10000円程度でやってくれるはずです。買った楽器にそのお金を追加して払うのが解せない人も居るかもしれないですが、やっておいた方が良いですよ。弾き心地もサウンドも全く変わりますから。



バッチリの調整済み品を買うのが一番ですけどね。