この組み合わせを前提とした製品であり、HIFIMANの推奨するヘッドホンシステムと考えることができます。HIFIMANとしてどんな音をリリースしてきたのか興味がわきますね。
ほかの人のレビューを見ていると評価が高く期待値も高まった中、それを裏切らない仕上がりとなっておりました。
〇無理矢理一言雑感
ノリが良く、厚みがあってボーカルも明瞭であり聴いていて非常に楽しい。鳴らしやすく性能を発揮しやすいので多くの人に勧めやすい。
良好な無線接続の安定性に、性能を十分に発揮できた良好な音質が両立されており非常に良い。
〇HIFIMAN DEVAとは
一般的には駆動しにくいと言われる平面振動板を採用するドライバー。これを積極的に開発するメーカーのひとつがHIFIMANです。2018年頃から振動版の薄型化=鳴らしやすい改良を一気に推し進めて、ANANDAなどの比較的低出力な環境でも鳴らしやすいヘッドホンを実現してきました。
またHIFIMANのアンプは性能や評価が高いのが有名であり、超小型DAPのSuperminiで駆動力が必要な自社のイヤホンに対応すると表明(実際にサイズの割にパワフルだった)したり、超弩級の真空管アンプを提供するなど技術を高めてきました。
また同時に、少し遅れながらもワイヤレスタイプへの挑戦も続けていましたが、正直言って評判も芳しくなかったのが実情でした。
そんなHIFIMANが2020年7月に発売したのが平面振動板採用の開放型ヘッドホンDEVAとBluetoothレシーバーBlueminiです。これの評判がすこぶる良く、実際に試して聴いていて楽しい、使って便利な良作であると感じました。 HIFIMANは、ひとつの着地点としてDEVAのようなワイヤレスヘッドホンを想定し、振動板の薄型化と(開発当初は評判が悪かった)ワイヤレスユニットの開発を続けていたのだとしたら、素晴らしいロードマップと開発を継続する意思の強さを感じました。
作りは良いです。ドライバーとイヤーパッドを固定するY字の部材は金属製で一体成型であるので頑丈。ハンガー部はモチモチとしたクッションで、イヤーパッドと共に全体でヘッドホンを支えるため重さを感じにくいです。そして非常に良好な装着感。
作りの面で不安を感じるのは、ドライバーをZ軸方向に回転させる機構の部分の耐久性がどうなのだろう?と気になる程度で、それ以外は長く使えそうな安心感があります。
Bluetooth受信機のBlueminiはプラグがヘッドホンに刺さって、ズレないように支えるのがHIFIMANロゴの部分だけなので、捩じる力が加わるとロゴ部材が割れてしまいそう。(最も、割れたところで機能的に問題はない)
Blueminiが軽いのとフィッティングが良いため、Blueminiが着いた左側だけ重いような違和感はないですね。
〇HIFIMAN DEVAレビュー
■全体の印象
最初に、有線接続した音の印象を。
中低音がすこしだけ凹んだドンシャリ。中音域のこもりなどは気にならない。低音域への追従も悪くないので、低音の量が多い音源だとフラットから低音を持ち上げたように感じるかもしれない。鮮やかで華やかなANANDA、やや落ち着きのあるSUNDARAに対して、ノリや元気の良さのあるDEVAといった立ち位置になる。
元気の良い音のバランスは、特別に苦手なジャンルも無いように感じるし、聴いていて楽しくてお勧めしやすい。分解能や左右の分離も良く、基本的な性能の高さも感じる。
■各音域の印象
ドラム、特にシンバルのニュアンスが出て上手いと感じるし金属的な響きが良く出ている。バスドラのキックの圧迫感も出るし、各種アタックのキレも良いので楽曲全体に勢いが出てノリが良い。ベースラインも明瞭。低音はそこそこ低い音まで再生能力があるし、イコライザーで盛ってやっても破綻するまでの余裕がそこそこある。ただし、そこを超えると一気に歪む。(かなり極端なテストなので参考程度に)
ボーカルは明瞭で表現は上手い方。鮮明さと柔らかさのバランスは中庸。ボーカルに、わずかに反射したような癖が乗っかるが、味のひとつと思える程度。ボーカルとの距離感は適度で、近くでささやく感じは薄い。息の音は少なめからそれなり。サ行の刺さりなどのキツさは無い。
エレキギターは鋭いディストーションやファズのエッジが出る方。どちらかというと厚みのある音作りの方が合う。アコースティックな楽器との相性も悪くなくて、フラメンコギターなども楽しめた。
元気の良い音のバランスは、特別に苦手なジャンルも無いように感じるし、聴いていて楽しくてお勧めしやすい。分解能や左右の分離も良く、基本的な性能の高さも感じる。
■各音域の印象
ドラム、特にシンバルのニュアンスが出て上手いと感じるし金属的な響きが良く出ている。バスドラのキックの圧迫感も出るし、各種アタックのキレも良いので楽曲全体に勢いが出てノリが良い。ベースラインも明瞭。低音はそこそこ低い音まで再生能力があるし、イコライザーで盛ってやっても破綻するまでの余裕がそこそこある。ただし、そこを超えると一気に歪む。(かなり極端なテストなので参考程度に)
ボーカルは明瞭で表現は上手い方。鮮明さと柔らかさのバランスは中庸。ボーカルに、わずかに反射したような癖が乗っかるが、味のひとつと思える程度。ボーカルとの距離感は適度で、近くでささやく感じは薄い。息の音は少なめからそれなり。サ行の刺さりなどのキツさは無い。
エレキギターは鋭いディストーションやファズのエッジが出る方。どちらかというと厚みのある音作りの方が合う。アコースティックな楽器との相性も悪くなくて、フラメンコギターなども楽しめた。
ピアノは少し柔らかい雰囲気。バイオリンのザリッとした弦をこする感じは少なめ。トランペットとサックスの鳴らし分けも上手い。どちらかというと少し暖かい印象で鳴る。
■そのほかの聴こえ方
録音が悪い音源はそれなりに上手く聴かせる。空間的な広がりはそれなり。ホールの反響は弱めだが、空間系のエフェクトの乗りは良い印象。打ち込み系の音源との相性が良い。
音量を小さくした時にもバランスが大きく変わったりしにくい。
■Blueminiで無線駆動の場合
音量は十分に取れる。環境ごとに最大音量が異なるが、いろいろ試したところ、普段楽しむ際の最大音量ぐらいまでは破綻感無く楽しめる。しかし、それより大きくなる(爆音ですよ)と歪っぽさが目立つ。音量を大きくした場合に最も顕著に歪むのは低音域だろう。ただし、これだけの音量がワイヤレスで出るなら十分だ。
音質は十分に良い。というか驚いた。厳密にチェックすれば、中高音域のほんの少しのザラつきとか、相当な低音量を再生するにはパワーが足りないなどがあるが、部屋の中でケーブルを気にせずに過ごせつつ、これだけの音質が実現できるのであれば大したマイナス点ではない。普通の音量で楽しむなら、私はブラインドテストで聴き分けられる自信はない。
遅延はそれなりにある。音楽ゲームは厳しい。
細かなチェックが終わった後は、 Surface Goと接続して、PC作業しながら音楽を聴いて…と気軽に楽しんでいた。
送信側の性能と建物の構造も関わるが、1LDKぐらいあれば接続が切れる心配は無さそう。実験時は、行きつけの店舗(木造)の1階に送信機となるSurface Goを置いて2階に移動しても、全く途切れることもなく安定していた。ちょっと驚き。
■お勧めできる人
細かなチェックが終わった後は、 Surface Goと接続して、PC作業しながら音楽を聴いて…と気軽に楽しんでいた。
送信側の性能と建物の構造も関わるが、1LDKぐらいあれば接続が切れる心配は無さそう。実験時は、行きつけの店舗(木造)の1階に送信機となるSurface Goを置いて2階に移動しても、全く途切れることもなく安定していた。ちょっと驚き。
■お勧めできる人
結構良いヘッドホンを使い慣れていて、音質にそこまで妥協したくないけど、無線の楽さも欲しいという人。リモートワークも増えてきているし、そのお供にするのは悪くない選択だ。全般的に何でも上手く、楽しい音を鳴らしてくれるのでおすすめしやすい。打ち込み系との相性が良い点は特筆できる。
有線で実力のあるヘッドホンが欲しいけど、無線も…という欲張りな人が、音質重視でこれを買っても費用対効果的に満足できる音質が得られるので、候補に入れる価値はある。
■お勧めできない人
特別に「合わない人」も少なそうなバランスだが、屋外は音が漏れるのでお勧めしない。空間的な広がりとか、定位が(悪くないが)めちゃくちゃ良いわけでもないので、そこを重視するなら他の方が良いだろう。また、ボーカルとも適切な距離を感じるので、そこを求めるなら別の選択を。
■雑感
う~む。良い仕上がり。DEVA+Blueminiは、小型高出力なアンプ部の設計技術、駆動しやすいドライバの開発技術の両方を持ち、そこにワイヤレス技術を追加して、まさにHIFIMANにしか作れないヘッドホンシステムに仕上がっていると感じました。HIFIMANの強さを感じます。
何が良いって、有線で3.3万円のヘッドホンと見ても魅力があるんです。3万円というと、音質にこだわるなら4万円欲しい…というのが2020年現在の私の印象(3.5万円=コスパの高いベイヤーDT880と同じぐらいの価格)なのに対して、非常に戦略的な価格だと感じますし、オマケでは決してないBlueminiが付属しての価格ですから。
〇買い物かごの中身の評価
大雑把なお買い得度を評価する指標です。基準はこちらから。
お買い得度 ☆☆☆☆☆
使い勝手 ☆☆☆☆☆
お勧め度
一般 ☆☆☆☆☆
趣味人 ☆☆☆☆★
コメント
お買い得度はセットで約3300円で購入として判定。有線ヘッドホンとして3.3万円なら☆4。4.5万円のHD650(手持ちはHD6XXだけど)に対して相応の差を感じて、☆5は過剰と感じるから。ここに優秀なBlueminiが付属して文句なしにセットで☆5。
使い勝手は、装着感が良く、苦手の少ない音のバランス、通信の安定性と文句なし。ただし、音漏れが激しいのは開放型の特徴なので注意。
お勧め度は一般には☆5。通信が安定している点で高得点で、どんな環境でも良好な音質が得られそうな点、良さの分かりやすい音のバランスが理由。趣味人には、優等生過ぎてぶち抜けた特技があるわけではないので、そういうのが欲しければ別でしょう、と☆4止まり。とりあえず使える便利な奴が欲しければ、文句なくDEVAを買って良いと思います。